M&Aって何?(初級編)

| Text: Shiraishi Kento

 よくM&Aって言葉は耳にするけど、具体的にどんなことかよくわからないといった方は多いと思います。何となく会社を買ったり、売ったりするイメージを持っている。ただ、会社を売ったり、買ったりってどういうことなんだろう […]

 よくM&Aって言葉は耳にするけど、具体的にどんなことかよくわからないといった方は多いと思います。何となく会社を買ったり、売ったりするイメージを持っている。ただ、会社を売ったり、買ったりってどういうことなんだろうと言った方に向けて、実務的にM&Aってどういうことをするものか簡単にご紹介をさせていただきます。これからM&A業界に入りたい方だけでなく、最近業界に入りましたといった方にも参考になる記事であると思います。動画も以下リンクからご覧いただけます。

解説動画:https://www.youtube.com/watch?v=yabFbtQrYBk

 M&Aとは、Mergers & acquisitions の略で合併と買収を意味します。

Mergers(合併):2つの法人格が1つの法人格になることを意味します

acquisitions(買収):A社がB社を買収した時に、よくあるケースでは子会社となり、傘下に入る形などを意味します

※事業譲渡などその他にも様々なスキームがあり、それらをM&Aと呼びますがイメージは上記のような図になります。

 簡単にいうとM&Aとは「会社の経営権を取得すること」とイメージいただくとわかりやすいです。

また、会社の経営権を取得するためには、経営権を持っている株主から経営権すなわち株式を買い取ることが必要です。

 つまり、M&Aのアドバイザーとは株式を売ったり、買ったりする際に、株価の算定や相手との交渉が必要になりますが、それらを得意としている専門家といっても良いでしょう。

M&Aをする目的

買手企業がM&Aをする目的

 会社の成長速度を上げるため、要は「時間を買うため」という理由が一番大きいです。新規事業の立ち上げを行うこともゼロから始めるとコストも時間もかかるので、自走している会社をM&をすることで比較的低リスクで新規事業の参入ができる。新規事業でなくとも、新規エリアの出店や人材確保の観点でも同じことが言える。

売主がM&Aをする目的

 2つの問題を理由にM&Aをされる方が多い

◾️ 事業承継問題を解決するための事業承継型

◾️ 成長速度を高めるための成長戦略型

 事業承継型のM&Aは7〜8割のイメージで残り2〜3割が成長戦略型。また、今後はある程度の時期を境に成長戦略型のM&Aが増えていくと予想されます。

M&Aのメリット・デメリット

❶売主側(個人)の場合

 売主個人とは株主のことであり、中小企業を対象にすると一般的には社長が該当するケースが多いです。

〈メリット〉

・事業承継問題の解決

 70〜80歳になっても後継者がいない場合、従業員や取引先との関係もあるので辞めたくても辞められない。廃業もなかなかできないことを考えると、後継者が見つかることで経営者が安心して引退できる。

・利潤の確保

 オーナーの持っている株式を譲渡することで現金化することができる。単純に資産として現金が増えるメリットもあるが、相続や資産承継の準備をするうえで株式を現金化し新たな対策を取ることもでできる。

・連帯保証の解除

〈デメリット〉

・経営権の縮小

 株式の譲渡に伴い、経営権を譲り渡すことになります。今まではオーナーとして会社に関わっていた方もオーナーではなくなるので、経営を続ける場合でも経営に関する意思決定の力は弱くなります。

❷売主側(法人)の場合

〈メリット〉

・経営が安定していく

 一般的には、買手企業様の方が組織としても大きく、財務基盤がしっかりしている大企業になりやすいので、安定した経営に繋がりやすい傾向にあります。

・従業員の雇用が守られる

 廃業や清算をしてしまうことで雇用が守られないリスクを回避できる。

〈デメリット〉

・会社の方針転換の可能性

 経営権が変わるため、今までと違った経営方針になったり、細かい承認フローが変化する可能性はあります。慣れれば良いかもしれませんが、今までのやり方から変化を嫌う人は、慣れるまで働きづらさを感じることもあると言えるでしょう。

 一方、経営がうまくいっている会社をM&Aした場合、変にテコ入れをしようとする企業は少ないので、うまく回っている会社の場合、方針転換は多くないと思います。

❸買主側の場合

〈メリット〉

◾️ 低リスクで新規事業を始められる

◾️ スピード感をもって既存事業の拡大ができる

◾️ 他社の売上利益を取り込める

いずれも成長するために必要な時間を買うことにつながっており、企業成長のための選択肢としてM&Aを実施されるケースが多いです。

〈デメリット〉

◾️経営統合に時間やコストがかかり、優秀な人材が流出

◾️想定していたシナジーが見込めない

◾️把握していなかった簿外債務が顕在化

 買主側にとっても大きな資金を投下してリスクがある中で、企業を譲り受ける判断を迫られます。リスク・リターンを考慮しても企業の成長戦略においてM&Aは外せない手法であると考える企業が多いでしょう。結果、M&Aの件数も順調に増加していると言えるでしょう。

まとめ

◾️M&Aは会社の経営権を取得することに近い意味合いで使われる

◾️M&Aをする目的は売主と買主で異なる

売主は事業承継問題の解決や成長戦略のため

買主は時間を買うため

◾️M&Aのメリット・デメリット

株式譲渡をするオーナー及び譲渡企業並びに買手企業の三者に分けて整理すると理解しやすい

〈監修〉 株式会社M&A Enabler 代表取締役 白石健人 同志社大学理工学部卒業後、三菱UFJ信託銀行に入社。その後、2018年M&A仲介事業を行う株式会社fundbookに参画。 M&Aアドバイザーとして、上場・未上場、セルサイド、バイサイド共に幅広い業種において数十件のM&Aの成約を支援。 2023年に株式会社M&A Enablerを創業し、代表取締役に就任。

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